ぐらめぬ・ぜぷつぇんのはてダ(2007 to 2011)

2007年~2011年ごろまで はてなダイアリー に書いてた記事を引っ越してきました。

開発現場で一度は耳にする「何で聞いてくれなかったの!?」なんて台詞は二度と聞きたく無い。

異なる二種類以上の開発現場で、ほぼ同様の条件で題名の「何で聞いてくれなかったの!?」という台詞がマネージャ/リーダから発せられるのを確認した。
ソフトウェアの開発現場で受託・内製問わない(両方の開発現場で確認)。ある担当者にアサインしたソフトウェアコンポーネントが(1)完成した後バグが発覚し、マネージャ/リーダが感知していない作りや設計になっていた、(2)〆切に近づいているが仕上がる感じが無く、確認してみたところ実装上の問題に嵌っていたりマネージャ/リーダが予測できないトリッキーなor複雑な設計orコードになっていた。
そのような場合に、「何でもっと早く相談してくれなかったんだ・・・」というマネージャ/リーダの無念の思いが込められ、「何で聞いてくれなかったの!?」という台詞が担当者に降りかかる。

最初に結論、というかリーダ/マネージャに対する「お願い」になってしまうが、離れ小島的にやけに静かに、しかし悩んでそうなメンバーが居たら確実に赤信号なので、即座に細かいフォローを入れて下さい。その場合も、「進捗大丈夫?」というよりは「放置しちゃって悪い、ひょっとして嵌ってる?」みたいに少し優しげに確認して下さい。「放置しちゃってごめんね」というニュアンスを混ぜるのがポイントです!
もし自分が想定している状況よりひどかったら(多分確実にひどいはず)、「何でもっと早く〜!」と言いたいのをぐっと堪えて、笑顔で「あちゃ〜、どうしようかな・・・」と続けて下さい。

・・・なんか書いてて、すごい我が儘言ってるような気がしてきた。リーダ/マネージャにしてみればお客様に約束を果たせなくなるかも知れない不安感に加え、「自分、信用されてなかったのかな・・・」とブルーになるような状況である。

危険信号

とまれ、題名の台詞を言われてしまう担当者がどのような雰囲気で仕事をしていたか、自分が感じた範囲で共通している特徴を挙げる。

  1. 一人で担当している:性能試験であったり、ストアドプロシージャであったり、Flashコンポーネントであったりする。内容が特殊でありその人にしか任せられなかったり、内容のボリューム的に担当を一人にしか振れない。また、技術や実装内容に類似点のある内容を担当している他の人間が居ない。ひとりぼっちの状態。
  2. 何日も連続して頭を悩ませている:キーボードを叩いたりしているので作業は進んでいるように見えるのだが、他人から見ても明確に「嵌っている」感じが滲み出ていた。
  3. 脈絡もなく、いきなりシステムに関する質問をマネージャ/リーダ、あるいはグループ内の熟練者に聞いたりする:「何で今更そんな事を聞くのか?」「どうしてそういう疑問が出てきたのか?」という疑念を感じられる質問をしてくる。質問された方は、その時点で何となく「やばそう」という感じはする。しかしまじめに悩んでいそうだし手は動かしているようなのでスルーする。「大丈夫?」と軽く聞いてみても、聞かれた方は嵌っている問題で頭が一杯だし、「この問題が片づけば間に合う」という考えが支配しているので「大丈夫です。」と回答。

端的に言って、明らかにグループの他のメンバから「浮いて」独りぼっちで作業している開発担当者の場合、ほぼ・・・いや。これまでの経験上100%確実に「何で聞いてくれなかったの!?」類似の台詞を後になってリーダ/マネージャから言われている。事例数としては2004年〜2009年の開発経歴中、7回。内自分が言われたのが3回、他人が言われていたのが4回。1年に1度以上、どこかの開発現場でこの台詞を聞いてきた・聞かされた事になる。

一応断りを入れておきたいが、以前所属していた会社で世話になった人達や、アルバイトで一時期お世話になった某社ではこの台詞は言われていない(のでご安心を。某Kさんとか某A部長とか某社のみなさん。)

ちなみにこの台詞を言われた方はどう返しているか?
自分が言われた時のケース:頭が真っ白になって何も言い返せませんでした。

もう・・・只ひたすら、「ああ、そうだ・・・言われる通りだ・・・何でもっと早く聞かなかったんだろう・・・最悪だ・・・」と、自責の念だけで頭の中が一杯になります。言葉を返そうにも、論理的な理由が思い浮かばない為、口を開けなかったり「うう」とか「ああ」とか、良くて「すみません」と凍えるような声で呟くのが精一杯。

自分なりの回答

もっと早く聞かなかったのは何故か、に対して論理的な理由など多分無い。
あえて社会人失格の汚名を受けるかも・・・な覚悟で理由を言います。

「マネージャ/リーダが怖くて質問できなかった」

のが、自分がかつて3回言われた時、全てのケースで当てはまった唯一の理由です。

・・・こんなの、「何故か?」と詰問されて面と向かって言えるわけないじゃないですか。・゚・(ノД`)!!!

その人をどう感じるかなんて結局個人の受け手側の意識に依ってしまうし、あるいは他人に自分を投影して見ているのかもしれない。なのですごい無責任で「精神的に未熟」と見なされそうで恥ずかしくて仕方が無い理由ですが、しかしそうだったのだからしょうがない。それに「他人が怖い」というのは「自分は他人を信用しない人間です」というのを公言しているようで恥ずかしい、怖い。

で、何がどう怖いのかというとですね。

  1. 「こんな事も分からないのか。」と言われそうな雰囲気だった。あるいは、以前質問した時に、そんな雰囲気を感じた。
  2. 話を最後まで聞いてくれそうにない雰囲気だった。以前質問して答えてもらったとき、さらに疑問があって「あの・・・」と言いかけた時には「もういいでしょ」と言わんばかりに自分の席に戻って仕事に没頭していた。そしてそういう時、追加で質問がすごいしづらい雰囲気を感じて、会話を続けられなかった。
  3. 質問したい内容が「ものすごいレアケースな異常処理」だったりしてとにかく細かく、ユーザーレベルから見れば「どうでもいいような」内容、でも結構な率で異常系に絡む内容だったり、システム全体に影響したりする内容だったりして、回答如何によっては大事になりそうな内容。もちろん大事にならな細かい質問の場合もあるが。とにかくそうした細かいけれど不安に思っている内容について、質問しても「どうでもいいでしょ」とか「なんでそんな細かい質問してくるの?」と言われそうな雰囲気を感じた。
  4. 逆に質問したい内容が多すぎて、「こんなに沢山質問したらリーダ/マネージャを煩わせてしまう」と勝手にこちらがわで妙な理屈で萎縮してしまい、質問できない。ぶん投げすぎて細かく砕ききれずにいる。それについて相談したいけど、ぶん投げてきたのはリーダ/マネージャ自身であるので、相談した場合「それくらい自分で考えてよ。任せるから」と言われるのが怖い or 言われたくない。

ようするに「なんか人間が合わないなぁ」という感覚がベースとなっていたり、自己否定され得るような感覚がベースとなって、質問できなかったり質問を躊躇してしまってました。自分の場合。ホントしょーもない・・・。

偶々そういうキャスティングにはまったのかも。

開発現場には色んなタイプの人が居て、それこそマネージャ/リーダに突っかかる位の勢いで「ここどうなんですか!?」とやりあう人もいれば、フランクに世間話しながら「ここどうしようか〜」「こうしてみますか〜」とまとめられる人も居る。
で、やっぱり自分がそうだったり他人がそうだったように、何となくメンバーから浮いてしまったりしてぽつんと離れ小島になってる人もいる。

ただ・・・これ、演劇で言うところのキャスティングの問題じゃないかな、と最近思う。やっぱり担当を一人にしか振れなかったり、特殊すぎてその人にしか振れない内容はある。ただし、一人しか担当して無くとも、マネージャ/リーダと何の支障もなく話し合って開発を進められる人もいる。
ただ、たまたま何かしらの偶然で、マネージャ/リーダと上手く話せない状態で離れ小島の役割を負ってしまう人もいるんじゃないかなーと。
というのも自分はさておき、過去4回他人が言われるのを端で聞いていたり、言われた人が普段他人とやりとりしている会話を耳にするに付け、それほど内に籠もりがちだったり、会話が出来ないタイプには思えなかったから。結構まじめそうだし、他愛ない会話も楽しいし、家庭持ちの人も居たのだが・・・。

ほんとに些細なきっかけでマネージャ/リーダと上手く話せなくなったりしたんじゃないかなーと思う。

  1. 開発の真っ最中にヘルプで入ってきてしまい、鬼のような形相でディスプレイと向かっているリーダ/マネージャに話しかけようとした時。
  2. リーダ/マネージャと、そのシステム/ソフトウェアの開発経験の差がありすぎて、当初上手く意思疎通が取れなかった。

・・・途中から入ってきた場合で、初対面で躓くとやばそうだな。

再度、リーダ/マネージャへのお願い

どんなに心の底で「そんな細かいところ、わざわざ質問してくるなよ。自分の頭で考えられないのかよコイツ使えないな〜。ああうぜぇうぜぇ、人の時間使いやがって・・・こんな鈍くて仕事が遅くて理解力の劣る人間とは二度と仕事したくないな。つーか今更何でそんな当たり前のこと聞いてくるんだ?わけわかんねーよ。」と悪口を呟いてくれていても良いので、「離れ小島で作業していた人が不安げに質問してきた時は、話を最後まで聞いて」あげて下さい。表面上は。
多分それがラストチャンスです。

今まで静かに、質問せずしかし、悩ましげにキーボードを叩いていた人がおもむろに「あの・・・ちょっと良いですか?」と質問してきたら、どんなに細かくて些末に思える質問を大量にしてきても、「今更何聞いてるんだ?」というピントのぼけた質問をしてきても、最後まで付き合って欲しいのです。そう言う時の質問は、五分五分の確率で、システム全体に影響したりお客様まで上げないと判断できなかったりする問題です。残り五分の確率で、細かい異常処理だったりシステムの仕様に対する根本的な誤解です。・・・えと、どちらにせよ「忙しいので基本方針だけ回答して放置」できない問題です。

他にも、以下のケースは「危ない」パターンですので、リーダ/マネージャ側から率先して「放置気味でゴメンね」と(嘘でも良いので)前置きしてから状況を頻繁に確認してほしいです。

  • プロジェクトの途中から入ってきた人で離れ小島的に浮いてしまっている場合
  • 内容が特殊でその人にしか担当できない、かつ離れ小島的に作業している
  • 内容は一見難しくなさそうなので、一人に担当させたけど、質問せず頭を抱えたりして、でも作業は進んでいるっぽい。

最初は「嵌ってますが・・・大丈夫です」的な回答しか来ないかも知れないですが、リーダ/マネージャが(表面上は)「WhyではなくHowの質問」、コーチングで言うところの「オープンクエスチョン」を続けている内に「実はここが分からないんですよ・・・」とか「前から聞こうと思ってたんですが・・・」というのがぼろぼろ出てきます。

ちなみに「離れ小島的に一人で作業していて、質問が殆ど無く任せていたソフトウェアが「出来ました」と言って納品された」場合、これまでの自分含めた7例の事例上、100%「何で〜!?」のパターンになりますので・・・とっくに手遅れです。

「何で早く聞かなかったのか」に対する論理的な回答は無く、担当者内部の感情的な理由で質問できなかったのかも知れません。
それはもしかしたら担当者の素質・能力の問題ではなく、偶然、タイミングの問題で、ほんの些細なきっかけで、そういう「役」にはまってしまったのかもしれません。
だからといって担当者を責めたい気持ちが消えて無くなるわけではないと思いますが、口だけでも良いので、「放置して悪かった」と言って下さい。担当者は(少なくとも自分の場合は)どんなにひどく叱責されても、その一言で(例え口先だけだったとしても)救われ、「このリーダ/マネージャなら信用できる」と心を入れ替えます。(重ねてですが「自分、msakamoto-sfの場合は」です。でも結構人に質問できずに悩む人って根は悪い人じゃなさそうなので、口先だけでも謝ってくれるとあっさり信じ込んじゃいそうだなーと・・・少なくとも数回くらいは。「リーダ/マネージャ側が救われないじゃねぇかよ」と言われたらそれまでですが。)

最後に

これまで書いてきた「言われた方の(=担当者側の)心理」は全て自分(msakamoto-sf)の体験をベースにし、推測を加えたものです。質問してこない人全てが同様の心理や質問してこない理由、状況、環境では無いはずです。
というわけで、もし当記事と似たような状況にお悩みの方とか居たら、トラックバックなりコメントなりでご意見頂けると嬉しいです。

リーダ/マネージャからすれば「報告・質問するのは担当者の義務なんだから、聞いてこない方が悪い」。
独りぼっちの担当者からすれば「メンバーの進捗や問題を把握するのはリーダ/マネージャの義務なんだから、確認しに来ない方が悪い」。

これじゃ議論は平行線・・・のように思えたので、「何でもっと早く聞いてくれなかったの!?」を過去3度も言われた自分の体験、過去4度目にした他人が言われている風景、をベースに担当者側の心理をひとまず描いてみました。

リーダ/マネージャ役からのご意見、歓迎です。